・・・。
重ったるい空気が首筋にまとわりつくような蒸し暑~い雨の夜のことじゃった。
晩酌の焼酎が切れていることを思い出したわしは村の寄り合いの後ひとりで10キロ先のコンビニまで軽トラックを走らせておった。
いつもは村の酒屋で買うんじゃが、その夜はもう10時を回っておったので酒屋はとおに雨戸が閉まっておったのじゃ・・・。
エアコンなど付いていない軽トラじゃから夏の雨の夜はフロントグラスが曇ってしまって前がみづらくてかなわん。
ボロタオルで窓を拭きながら半分ほど来たところで何故か急にラジオの電波が悪くなったようなのじゃ。
音が切れ切れになって雑音もひどい。
「チッ・・」
舌打ちしながらラジオのスイッチを切ろうと手を伸ばしたそのときじゃ。
「た・・・す・・・・け・・・・て・・・・」
た、確かに雑音に混じってそう聞こえたのじゃ。
背中を冷たい汗がひとすじ、流れ落ちるのがわかった。
ぎょっとしたわしは、慌ててラジオのスイッチを切ると大声で歌を歌うことにしたのじゃ。
「六羽の雀が止~まった~、一羽の雀が言うことにゃ~、戦に負ーけて逃げてきた~・・・」
いかん!
事もあろうに”六墓村手鞠歌”を歌ってしまった・・・・。
そのときじゃ、曇ったフロントウィンドウ越しに”ぼうっ”と不気味に白く浮かぶ物を見たのじゃ。
わ、わしは見てしまったのじゃぁ・・・。
あの恐ろしい・・・、な・ま・く・び をな。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!」
すいません。恐すぎです、このかかし・・・。